– 徳川家康に学ぶ –

徳川家康に学ぶ ―― 風水で築かれた“未来都市”・江戸

戦乱の世を終わらせた知将、徳川家康
100年以上続いた戦国時代に終止符を打ち、260年以上もの平和な時代――江戸時代を築き上げた、日本屈指の名経営者です。

しかし、彼の手腕は単に戦の才や政治的な駆け引きに留まりません。
実は「都市づくり」においても、家康は異彩を放っていたのです。
その背景にあったのが、“風水”という古代の知恵でした。


■ 未開の地「江戸」を、風水都市に変える

家康が幕府を開いた頃の「江戸」は、まだ未開の地。
海に面した湿地帯と、手つかずの山林が広がるだけの土地に、
人々の暮らしが根づいていたとは言い難いものでした。

そこに目をつけたのが、家康の参謀であり、天台宗の僧侶だった天海僧正(てんかいそうじょう)
彼はただの宗教者ではなく、**密教・神道・陰陽五行・方位学・占術に通じた“知の錬金術師”**のような存在でした。


■ 比叡山を江戸に“移す”魔法

天海は、平安京が比叡山に守られていたように、
江戸も“風水の力”で守ろうと考えました。

ところが、京都のような理想的な地形は江戸にはありません。
山も川も、配置も異なる。だから彼は、発想を大きく転換しました。

「山がないなら、名前で“山”をつくればよい

そうして鬼門(東北)に築かれたのが、東叡山寛永寺
西の比叡山に対する「東の比叡山」というわけです。
さらにその隣の不忍池(しのばずのいけ)は、京都の琵琶湖を模して整備されました。

つまり天海は、“形”ではなく“言霊”と“配置”で、江戸を守る新しい風水を構築したのです。


■ 江戸五色不動で“結界”を張る

さらに家康と天海は、江戸城の周囲に五つの不動尊を配置。
それぞれが陰陽五行に対応した「五色不動」と呼ばれています。

  • 目黒不動(泰叡山 龍泉寺)【黒・水】
  • 目赤不動(南谷寺)【赤・火】
  • 目白不動(金乗寺)【白・金】
  • 目青不動(教学院最勝寺)【青・木】
  • 目黄不動(永久寺)【黄・土】

これらの配置によって、江戸城を囲むように“結界”が張られたのです。
陰陽五行の思想では、水・火・金・木・土が互いにバランスを取り、世界を調和させるとされており、
この五色の不動尊が、まさに都市全体の気の流れを整える役割を果たしていたとされます。


■ 現代にも残る“結界”の名残

面白いのは、この五色不動をつなぐ線上に、現在の国会議事堂の中心があるということ。
これは偶然でしょうか? それとも――設計者が何かを意図したのでしょうか?

都市とは、単なるインフラや建物の集合体ではありません。
その“場”に宿る気や、人の流れ、歴史と祈りが重ねられてつくられていくもの。

徳川家康と天海は、そのことを直感的に、あるいは深く理解していたのかもしれません。


江戸という都市の“見えない設計図”

江戸城を中心に展開されたこの“風水都市計画”は、
単に都市を守るだけでなく、人の暮らしを安定させ、
長期政権を支える土台を築いたともいえるでしょう。

都市計画とは、最大の経営戦略である。

そう考えれば、家康はまさに“国をデザインした男”と言えます。


おすすめの書籍

📘 荒俣宏著『風水先生』
📘 内田一成著『レイラインハンター』(江戸の鬼門封じと五色不動について詳述)

引用:江戸の鬼門封じと五色不動(内田一成氏)

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